なつかしい曲…
これをずっと聴いてた頃は、もう10年も前なんだ。
いっしょに居た人たちも、過ごした場所も、もう随分、一つ一つ、夢だったみたいに遠く感じる。
わたしも、強くなったでしょ
成長、した…
ううん、ほんとうは べつにいいの
なにがどれくらい変わったとか、なにを忘れてしまったとか、
何ができるようになったとか、だれと出会ったとか、
こんなことを知ったとか、こんな場所に行ったとか、
ただ、自分の髪に鼻先をうずめたときに感じた。
ああ、 きっとやさしい香りがするんだろうな
あたたかい やわらかくって、 少し頼もしい
力強くてでも儚い、
言ったらそれにフォーカスしてしまうとか、そんなことを思いながら、でも思ってしまう。
やっぱりあいたい。 いっしょに、いたいよ、眠りたいよ。
きっとこんなことは、昼間の街中では忘れてしまう感情だけど、
わたしはいまでも時々ふと手のひらに思い出して、考えてしまうよ。
あのころの、ずっと終わりのなかった真っ暗な宇宙みたいな夜。
あたたかい、橙色の街灯。
大理石の石としずかな通りに反響する白い雨音。
ずっと待ちながら、窓の向こう側と向かいの屋上を 見つめてみたりした。
部屋の明かりはつけられなかった。
待っているじぶんがいやだった。
決してあきらめきれないのに、はっきりした糸口もわからなくて、希望を見続けながら、かなしかった。
すっかりわたしのこころは、
何回も泣くたびに新陳代謝して
うつくしいまでに あれだけわすれたくなかった、
宝石のような
痛みと、
大好きなやさしさと、
甘さと
恥ずかしさと
嬉しさと
誓いと 約束と
いっしょに感じた喜びも無力感も、戸惑いも、
滅んで
わたしは
いまのわたしになって、
いまもまた一瞬ごとに変わって、
いつか君を忘れてしまうのかな。
それはやだな。
もうわすれたくない。
もうわすれたくない。
生まれ変わらずにいたら、ずっとわすれずにいれるなら、
それもいいかもしれないと、思ってしまうほど。
でもきっとかまわないんだろうね。
いつかのわたしも
あなたも
わすれるのも
わかれるのも
きっと受け入れるんだろう。
わたしは、
わたしとしてうまれてきてよかった
わたしが頭からつま先までだったとしても、
あそこからこの星まで、もっと広範囲だったとしても。
こんな気持ちを 味わえたんだもん。
おねえちゃんが せつない って言った。
そのころ。
わたしは、まだせつないなんて日常で聞いたことも、使ったこともなかったから、
何年か せつない について、考えてた。
これがせつないかな?
これも…せつないかな。
せつないって、しあわせなことかな。
せつないって、いつ
どうして
どのくらいずっとつづくの
あなたをすきになったから、
わたしはきっとその意味をわたしなりに知ったとおもうよ。
わたしの「せつない」はあなたバージョンなの。
ずっとあなただけをすきでいるとじぶんにやくそくした。
もう12年も前なのに、いつ、どこでやくそくしたのかも覚えてないのに、
その気持ちだけはわすれてない。
どうしてかな。
あの子が死んでしまってから、もう泣かないって、なぜか決めて、でももう何度も泣いてしまったように、
わたしはたくさんの人をあなたに出会ったあとにすきになってしまった。
でもみんなちがうの。
ひとりとして同じすきを向けたことはない。
気持ちが高ぶったとしても、ひとりひとりのかがやきがちがうから。
やさしさがちがうから。
思いがちがうから。
時 と 場所 がちがうから。
わたしのなかのあなたの居場所は、ずっとそれをいっしょに見つめながら、
わたしはそのことに困惑して、
わたしはもうずっととどまっていたくて、
大好きな時を反芻して
大好きなあなたを どんな景色にも投影して、
いつしかそれすらもやめてしまった。
まるで雨上がりの土が自然と乾くように。
紅葉がいつか落ち葉となっているように。
わたしがほしかったのは 永遠。
わたしがほしかったのは ずっと変わることなく共にあってくれる、大きくてあたたかい愛。
わたしがあこがれたのは つよくて、広い世界を駆けるきみ。
わたしがなりたかったみたいな かつてのわたしみたいなまっすぐで、大声で、正直で、不器用なんだか器用なんだかわからない、ただいとしいきみ。
あなたといれるなら、ほかのなにがどうなってもかまわなかった。
しんでしまっても。
産んででも、あなたにあいたかった。
せかいってなんだろう。
…なんでまだ生きているんだろうと思った。
一年半前。
みててね
きみに最高の 笑顔みせるから