10/ 10/ 2022
だいすきな10/10にこれを書けてうれしい。
ここ二日ほどは、一切パソコンを開かなかったので、ここに書くことはなかった。パソコンに触らないのはひどく久しぶりに思えた。無音の心。一時間でも二時間でもただ床に大の字で寝そべって、窓の外の空を見たり見なかったり、なにか考えているのか、考えていないのか。そんなまっしろな自分の内が、なんだか久しぶりで、いつからか求めていたような気がして、ありがたかった。
わたしは宇宙についてしりたい。
この世を貫いている、一つ一つの細部を取り出せば複雑な規則性なんてないように思えても、ほんとうはずっとただ一つ人知れず続いている、唯一の法則。それを真理と呼ぶのかもしれないし、そんなものあるのかもわからない。
でもやはりいつもどこかで手を伸ばしているのはそれなんだ。求心という言葉を思い出した。
昨晩はじめてLINEのアカウントを消した。
大学に入るときに初めてスマホを買って、それから「LINEがないと大学生活に支障をきたす」と何人かの人が言うんで、使い始めた、LINE。10人、30人、といるだけでおっかなかったグループLINE。スタンプはどんなものを使おうか?自分の名前は、プロフィール写真は。既読がつくタイミング、つけるタイミング。通知設定…。
中1なんかでLINEを始める同年代の子もいたのに、わたしはそうやっておどおどとLINEを使い始めた。2018年の春だった。
4年半が経った。LINEを消したいと思うことはその間一度や二度ではなかった。しかし、部活動や日頃会う友人、バイト先との連絡、消すことを想像するほうが疲れた。でも「LINEがある」ということ自体がやかましかった。わたしの心に。
昨晩、山口路子さんの『逃避の名言集』を読んでいた。数年前に立ち読みして書店で買ったもの。今の自分に重要に思えるところをメモして、寄付なりして手放そうと思って、ノートに色々な作家さん、アーティスト等の人々の名前や作品名を書き留めていた。
ルー・サロメという人の言葉を改めて見たとき、幼少のときの自分を思い出した。さまざまなことへの不感、妥協、誤魔化し。それらに歯を剥いていた頃の有り様。
ノートにメモするのに疲れて、途中で床に寝っ転がってベートーヴェンを聴かせて、とGoogleNestにお願いした。今回は有名どころだからかすなおに流してくれる。ありがとう…。
シューベルトか誰かが、「ベートーヴェンは誰にでもわかるものではない。モーツァルトは誰にでもわかるが、ベートーヴェンは深く傷ついたり、失意のどん底にいたり(失恋する、等々によって)している者にしか届かない」といったようなことをコメントしたらしかったから。それも同じ本に載っていた。
わたしは今、10年より長かった失恋のようなものもどこか明けたように感じているし、ときにはキャーキャー思うほど好きだった人への気持ちもどうやらもうないように思うこの頃で、なにより帰国して、無音の心で、先日たっぷり泣いて、どこかからっぽに感じていたから、「きっといまの私じゃ、ベートーヴェンさんは深く染み入ることはないだろう。ひどく残念だ。」と思った。苦しみの欠如。苦しみからの解放を望みながらも、同時にその苦しみが愛おしかったころがときどき恋しいのはこういったためでもあるのだ。苦しみとは、誤解を恐れずに言うなら、「運命」であり、運命の贈り物だと思うからである。生まれてきた先端から、もうそのシチュエーション、条件は誰にも模倣追従はできない唯一のもので、生まれてきた境遇、環境は、苦しみと喜び、表裏一体の贈り物だというのが、いつからかの持論だからである。
話がかなり逸れた。
そうしてベートーヴェンを聴いて寝っ転がっていたら、気づいたときには、「LINEのアカウントを今夜消そう」という決断が出ていた。それから二時間ほどのうちに方々へ自身の他の連絡先を伝え、挨拶をし、アカウントを消した。
嬉しかったのは、「了解」と案外みな応じてくれるのが早く、驚いてくれる人もあれば、自分の連絡先を教えてくれる人もあれば、メールで早速連絡をくれたり、言葉が足りなかったのか心配をしてくれる人もいた。アカウントを消すことを教えてくれてありがとうと言われると、「やっぱり伝えておいてよかったな(危く一報もなく消すところだった)」とひやひやとした気持ちになった。それ以上に、その言葉に同様にこちらこそという気持ちになった…。
会わなくなる人もいるから、また誰かと出会える。気持ちとして…。 そんな自然なことが、出会いの死生とでもいうべきものが、変に淀んでいたのだ。出会いの死生において、SNSはアスクレピオス的な、罪の存在である、と改めて感じる。
死 永遠がないこと 別れ 分解 破壊 消滅
それらがあるから助けられてきたこと、助けられていくことに、鈍感だ。そう、この国を歩いていて思う。
4年半ぶりの静寂は、深く、心地よかった。